荒野の岩陰【アンジニティ世界】
ワールドスワップが起きてから、数時間が経過した頃のアンジニティ。
その荒廃した世界の片隅に、崩れて重なった岩によって出来た日陰がある。
その荒廃した世界の片隅に、崩れて重なった岩によって出来た日陰がある。
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白大甕 環(869)
水原九郎(ENo.1250)
「はははは、そーいやそーかもな。
ま、こんなコトになっちまったんだし仕方ねーだろよ。」
あなたを抱き締めたままに、九郎は努めて普段通りに、ケラケラと笑う。
けれどそれはこの世界に飛ばされて、初めて零れた笑みだった。
ハザマでの九郎は少なくとも、異能によって行く先をある程度見通していた。
けれど、あなたとはぐれてしまう未来は、見えていなかったのだ。
「……環…、本当に、会えてよかった。」
九郎あなたを真っ直ぐに見つめ返して、安堵の息を、長く長く吐いた。
それからあなたの髪を撫ぜながら、あなたを胸元に抱く。あなたを柔らかく、けれど確かに、包み込むように。
ま、こんなコトになっちまったんだし仕方ねーだろよ。」
あなたを抱き締めたままに、九郎は努めて普段通りに、ケラケラと笑う。
けれどそれはこの世界に飛ばされて、初めて零れた笑みだった。
ハザマでの九郎は少なくとも、異能によって行く先をある程度見通していた。
けれど、あなたとはぐれてしまう未来は、見えていなかったのだ。
「……環…、本当に、会えてよかった。」
九郎あなたを真っ直ぐに見つめ返して、安堵の息を、長く長く吐いた。
それからあなたの髪を撫ぜながら、あなたを胸元に抱く。あなたを柔らかく、けれど確かに、包み込むように。
1/21 23:39:05
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水原九郎(1250)
白大甕 環(ENo.869)
「あぅ……ありがとう。九朗…久しぶりに、やっちゃいましたね…」
貴方の腕に抱き留められて、力なく安堵の吐息を零した。
感情の高ぶりによる情動脱力…普段なら、突然倒れて心配をかけてしまう事を申し訳なく思うだろうけれど、今は違う。
貴方の胸元に頬を当てていると、普段より早い心音が聞こえてくる。
少し息が上がっている貴方の息使いも、直接触れて伝わってくる。
「…九朗…本当に、九朗なんですね。
遅くなんてないですよ。全然…遅くなんて……っ」
顔を上げれば貴方と目が合わせられる。
その事を嬉しく思って微笑みを浮かべ…やがて耐えられなくなった涙が零れると、貴方の胸元で声を上げながら泣き始めた。
貴方の腕に抱き留められて、力なく安堵の吐息を零した。
感情の高ぶりによる情動脱力…普段なら、突然倒れて心配をかけてしまう事を申し訳なく思うだろうけれど、今は違う。
貴方の胸元に頬を当てていると、普段より早い心音が聞こえてくる。
少し息が上がっている貴方の息使いも、直接触れて伝わってくる。
「…九朗…本当に、九朗なんですね。
遅くなんてないですよ。全然…遅くなんて……っ」
顔を上げれば貴方と目が合わせられる。
その事を嬉しく思って微笑みを浮かべ…やがて耐えられなくなった涙が零れると、貴方の胸元で声を上げながら泣き始めた。
1/21 20:52:04
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白大甕 環(869)
水原九郎(ENo.1250)
腕の中に収まったあなたはいつもと同じように温かくて、確かにそこにいて…
…背に回されたあなたの腕が、伝わる力が、何よりも嬉しかった。
あなたなら無事でいるだろうという信頼はもちろんあった。再開できるとも信じていた。
けれど、あなたと離れ離れになり、連絡手段さえないということがこんなに心細いのかと、思い知らされた。
「ホントは、もっともっと早くこうしてやりたかったんだけどさ…
…悪ぃ、遅くなっちまった。」
抱きしめる力を緩めることはしないままに、そう告げる。
それはあなたのためというよりも、九郎自身が、あなたを放したくなかっただけだった。
けれど、あなたの身体からふわりと力が抜ければ…
「…っと……!」
…一瞬バランスを崩しそうになって、けれどなんとか、あなたの身体を抱き留めた。
背に回していた左腕はそのままに、右腕はあなたの頭を、自分の胸に抱きかかえるようにして。
「……大丈夫だ、もう大丈夫。」
…背に回されたあなたの腕が、伝わる力が、何よりも嬉しかった。
あなたなら無事でいるだろうという信頼はもちろんあった。再開できるとも信じていた。
けれど、あなたと離れ離れになり、連絡手段さえないということがこんなに心細いのかと、思い知らされた。
「ホントは、もっともっと早くこうしてやりたかったんだけどさ…
…悪ぃ、遅くなっちまった。」
抱きしめる力を緩めることはしないままに、そう告げる。
それはあなたのためというよりも、九郎自身が、あなたを放したくなかっただけだった。
けれど、あなたの身体からふわりと力が抜ければ…
「…っと……!」
…一瞬バランスを崩しそうになって、けれどなんとか、あなたの身体を抱き留めた。
背に回していた左腕はそのままに、右腕はあなたの頭を、自分の胸に抱きかかえるようにして。
「……大丈夫だ、もう大丈夫。」
1/20 22:37:30
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水原九郎(1250)
白大甕 環(ENo.869)
「…っ!……ぁ…」
今度ははっきりと聞こえた声に勢いよく振り向いて、その視線の先にようやく貴方を捉えた。
その姿を見たとたん、驚きに目を見開いて、その表情はほころぶように笑みに変わる。
「九朗っ!!!!」
駆け寄ってくる貴方を、両腕を広げて受け止める。
絶対に再会すると信じていた。出来ると信じていた。抱きしめられる腕の力強さに応えるように、こちらからも精一杯抱きしめながら名前を呼ぶ。
「良かった…また会えました…!
約束したけど、どこに居るのか分からなくて…私…不安で…」
貴方の声が聞こえる。腕の中に居る暖かさを感じる。
懐かしいとすら思える感覚に、気が付くと左目からとめどなく涙が零れていた。
しかしやがて、貴方の背中に回した腕から力が抜ける。
抱きしめる力が弱まった瞬間、全身が脱力して貴方の方へとくず折れるように倒れかかった。
今度ははっきりと聞こえた声に勢いよく振り向いて、その視線の先にようやく貴方を捉えた。
その姿を見たとたん、驚きに目を見開いて、その表情はほころぶように笑みに変わる。
「九朗っ!!!!」
駆け寄ってくる貴方を、両腕を広げて受け止める。
絶対に再会すると信じていた。出来ると信じていた。抱きしめられる腕の力強さに応えるように、こちらからも精一杯抱きしめながら名前を呼ぶ。
「良かった…また会えました…!
約束したけど、どこに居るのか分からなくて…私…不安で…」
貴方の声が聞こえる。腕の中に居る暖かさを感じる。
懐かしいとすら思える感覚に、気が付くと左目からとめどなく涙が零れていた。
しかしやがて、貴方の背中に回した腕から力が抜ける。
抱きしめる力が弱まった瞬間、全身が脱力して貴方の方へとくず折れるように倒れかかった。
1/20 22:05:08
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白大甕 環(869)
水原九郎(ENo.1250)
九郎からはあなたが見えていなかった。
けれどその声を、ずっと探し続けたあなたの声を、聞き逃すはずがない。
「……っ。」
声のした方に、岩場の方へと視線を向ける。
まだ、あなたの姿は見えていなかったが…九郎はそちらへと駆け出した。
そうして、岩陰にあなたを見つけることができれば…
「……環っ!!」
…その名前を呼びながら、駆け寄った九郎は真っ先に、あなたを抱きしめるだろう。
それが蜃気楼でないことを、あなたがそこにいることを、無事であることを確かめるように。
「良かった……良かった…!
どっか行っちまったのかと思ったわ……心配掛けやがって。」
無論こうしてはぐれたのはあなたのせいではない。
だから口調は責めるようではなく、ただ、その無事を知って、安堵したように。
けれどその声を、ずっと探し続けたあなたの声を、聞き逃すはずがない。
「……っ。」
声のした方に、岩場の方へと視線を向ける。
まだ、あなたの姿は見えていなかったが…九郎はそちらへと駆け出した。
そうして、岩陰にあなたを見つけることができれば…
「……環っ!!」
…その名前を呼びながら、駆け寄った九郎は真っ先に、あなたを抱きしめるだろう。
それが蜃気楼でないことを、あなたがそこにいることを、無事であることを確かめるように。
「良かった……良かった…!
どっか行っちまったのかと思ったわ……心配掛けやがって。」
無論こうしてはぐれたのはあなたのせいではない。
だから口調は責めるようではなく、ただ、その無事を知って、安堵したように。
1/20 19:50:44
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水原九郎(1250)
白大甕 環(ENo.869)
「………っ!」
閉じかけた瞼が、跳ね上がった。
風の音に混じって微かに…微かにだが、聞こえた気がする。
「………九朗…?」
名前を呟きながら立ち上がって、荒野の向こうへと目を凝らす。見渡す限りの、何もない荒野…その中に人影は見えないかと、砂埃に目を細めながら縋るような思いで見渡した。
吹きすさぶ砂埃の向こうから、見慣れたカソックの黒が見えるのではないかと…
「お願い…お願い…どこ……もう一度声を上げて…」
見つからない。
一面に広がるただの荒野に、やっぱり聴き間違いだったかもしれないと思いかけて、首を横に振った。
もしも近くに居るなら、こっちの声だって届くはず…右手を口元に沿えて、大きく息を吸った。
「……っ…九朗ー!!…九朗ー!!!!」
閉じかけた瞼が、跳ね上がった。
風の音に混じって微かに…微かにだが、聞こえた気がする。
「………九朗…?」
名前を呟きながら立ち上がって、荒野の向こうへと目を凝らす。見渡す限りの、何もない荒野…その中に人影は見えないかと、砂埃に目を細めながら縋るような思いで見渡した。
吹きすさぶ砂埃の向こうから、見慣れたカソックの黒が見えるのではないかと…
「お願い…お願い…どこ……もう一度声を上げて…」
見つからない。
一面に広がるただの荒野に、やっぱり聴き間違いだったかもしれないと思いかけて、首を横に振った。
もしも近くに居るなら、こっちの声だって届くはず…右手を口元に沿えて、大きく息を吸った。
「……っ…九朗ー!!…九朗ー!!!!」
1/20 19:05:32
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白大甕 環(869)
水原九郎(ENo.1250)
あなたと一緒に居る時に飛ばされていれば、どれほどよかっただろうか。
けれど運命はそれを許さなかった。
あなたと同様に、九郎もまた、広大な荒野を彷徨い歩く。
「環ーっ!!!」
その名を大声で呼び、周囲に目を凝らした。
見えるのは流木のような残骸と、岩場。
それから枯れた川の跡だろうか。
「………何処行っちまったんだよ。」
教団の面々とは顔を合わせたが、あなたを見たという者はいなかった。
不安と、焦燥。
「環ー!!!居るなら返事してくれ!!!」
それが九郎に、声を張り上げさせる。
その声はあなたに、岩陰にいるあなたの耳に、届くだろうか。
けれど運命はそれを許さなかった。
あなたと同様に、九郎もまた、広大な荒野を彷徨い歩く。
「環ーっ!!!」
その名を大声で呼び、周囲に目を凝らした。
見えるのは流木のような残骸と、岩場。
それから枯れた川の跡だろうか。
「………何処行っちまったんだよ。」
教団の面々とは顔を合わせたが、あなたを見たという者はいなかった。
不安と、焦燥。
「環ー!!!居るなら返事してくれ!!!」
それが九郎に、声を張り上げさせる。
その声はあなたに、岩陰にいるあなたの耳に、届くだろうか。
1/20 18:30:37
白大甕 環(ENo.869)
見渡す限りの荒野が広がっている世界、人の営みと呼べる物は、視界の中では見当たらない。
そんな世界の片隅で、1人の女性が日陰に座り込んで、自分の膝を抱えていた。
「…ふぅ……お父さん…どこにいるのかな……それに、九朗も…どこかに、居ますよね…」
ワールドスワップ、この世界に来た瞬間に、何が起きたのかは分かっていた。
その瞬間に、奪われていた記憶が『追加』されたからだ。ここはアンジニティであり、自分たちは…負けたのだ。
「………」
頭をよぎった事実を、首を横に振って頭から追い出す。それは今考える事じゃない。
ワールドスワップが起きた直後から、見知った人を探して歩き続けた。
もし、イバラシティから全ての人が転移させられているのなら、その人達もここに居るはずだからだ。…けれど、暫く歩き続けた脚は、疲労で重く感じた。
「…少し休んで……そうしたら、また歩かなきゃ…」
そう呟きながら、だんだんと瞼が重くなってくるのを感じる。
こんな場所で寝てはいけない。そう自分に言い聞かせながら、ぼやけていく景色を眺める。
そんな世界の片隅で、1人の女性が日陰に座り込んで、自分の膝を抱えていた。
「…ふぅ……お父さん…どこにいるのかな……それに、九朗も…どこかに、居ますよね…」
ワールドスワップ、この世界に来た瞬間に、何が起きたのかは分かっていた。
その瞬間に、奪われていた記憶が『追加』されたからだ。ここはアンジニティであり、自分たちは…負けたのだ。
「………」
頭をよぎった事実を、首を横に振って頭から追い出す。それは今考える事じゃない。
ワールドスワップが起きた直後から、見知った人を探して歩き続けた。
もし、イバラシティから全ての人が転移させられているのなら、その人達もここに居るはずだからだ。…けれど、暫く歩き続けた脚は、疲労で重く感じた。
「…少し休んで……そうしたら、また歩かなきゃ…」
そう呟きながら、だんだんと瞼が重くなってくるのを感じる。
こんな場所で寝てはいけない。そう自分に言い聞かせながら、ぼやけていく景色を眺める。
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