こよりのメンテナンスルーム

病室を彷彿とさせる無機質なベッドに白い壁、天井。
何に使うのかよく分からない、見たことも無い仰々しい機械が反対側の壁に並んでいる。高そうだ。

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こより(ENo.90)
「………」

データの構築は一朝一夕に済むものではない。
ヘリオからもらったこの腕輪​──​─フィトの花の腕輪が「自分のモノ」となるまでに、「約束」を果たそう。

そう、思った。
5/18 19:03:07
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こより(ENo.90)
「(……ええ、約束をしましたからね。ヘリオさん)」

そう。
自分は確かに約束をした。

勇者として、魔王を倒し。
ヘリオのことも、守るのだ、と。

​──​─けれど。
その本質は、もっと違うところを指している。

「(……)」

藤波こよりはデータである。
そして恐らく、村娘のヘリオもデータである。
……データにとって、何よりも​──​─用意された「魔王」なんかよりも怖いものがなにか、こよりはよく、知っている。

「(……守って、みせますよ。ヘリオさん)」

​──​─約束通り。
その、「本来の定め」を。

遂行させて、みせよう。
5/18 19:01:27
> こより(90)
こより(ENo.90)
「(……どうやらかなり、システムが不安定な様子と見受けましたが)」

あれだけ明滅し、ことある事に主張をしているのだ。
きっと誰もが触れるだろう、「首飾り」の話題。
……しかしそのとき、彼女に明らかな「異変」が生じた。

「(……欠陥品、ということでしょうね)」

バグの元となる「やりとり」を「なかったことにする」ことでしかその身を守れない。
しかも、その手段もかなりお粗末だ。

きっともっと自然に、プレイヤーに気付かせないように話題を「誘導」することだって出来るはずだ。
……けれどそれすらなされなかったのは、その「対策」を興じる前に、「破棄された」​──​─と、考えるのが当然自然なことだろう。
5/18 18:37:40
> こより(90)
こより(ENo.90)
「(……ヘリオさん)」

浮かぶのは、腕輪をくれた少女の姿。
……恐らく、自分に似て、非なるもの。
データの塊。しかしそのデータに、「自由」などない。

「(私は、勇者さま)」

彼女にとっての自分は間違いなく「勇者」なのだろう。
光魔法を用いて、魔王を倒す。

……彼女の会話から分かったのは、そんなものだ。

「(やはり、RPGのNPC……でしょうか)」

時折聞こえる謎の「ぴこん」音といい、会話から見える「勇者さま」像といい。
自らがRPGの内部に潜り込んだかのような気分は、拭いされない。

「(そして……多分、あの首飾りが)」

……『核』のようなもの。
演算処理を必要とするだろう問い掛けに、確かにあの首飾りは異音を放っていたわけだし。
多分そこまでは、間違いない。

問題は​──​──
5/18 18:30:48
こより(ENo.90)
どこかから帰宅したこより。
……薄く微笑んで、大事に手のひらに包んだ「腕輪」を見つめた。
花で編まれた、可愛らしい腕輪だ。

壁際に並ぶ機械のひとつ。
そこに備えられたカプセルに、腕輪を入れる。
そうして、機械のスイッチを入れた。

駆動音はとても静かだ。
最新式は、こうも違う。
5/18 18:23:57
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