月明かりの花畑

その花畑は亡くした人や無くした物の幻を見れるらしい。特に、ここに来る時になくした何かを思い浮かべていたりしたらよく見えるらしいが…
あくまで物言わぬ幻…
この花畑の入り口になる森に来た時点で何か亡くした/無くした過去を持つ者なら導かれる様にこの中心地の花畑まで導かれるだろう…

そして、その花畑の隅にある小屋に住まう男性が1人…

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ソルス(ENo.441)
「◾️さなかったなんて、勿体ない──」

何を言っているのか最早分からなかった、その最中も組み伏せられ、動けなくされる。彼の方が体格が上だっただけに尚更こうなっては抵抗が出来ない。
涙が伝うままに彼の時とはまた違う、喰う宴が始まってしまった。

その最中、抵抗などとても出来なかった。
せめて出来る抵抗はひとつ、助けを求める事だけだった。
誰でも良い、最早誰でもよかった、ここから助け出して欲しかった。

「いや……嫌だぁ!誰か、誰か、誰でも良いから!!助けて、助けてぇぇ!!」

情けなく、叫んで助けを乞うが、それは誰にも届かない。
その叫びを聞いてそれはまた、嗤う。

「あは、さっき君の──も助けを求めていたねぇ…君が何も出来なかった様に、助けはこない

その一言に目を見開く。
そうだ、自分が、あんなにも目の前で苦しんで、助けを求めていた彼を助けられなかったじゃないか。
喰われる様子を、喰い潰される様子を、ただ見てるだけだったではないか──

「」

言葉が出せないまま、最早逃げ場はない。
終わりを待つしかなかった。
2/28 03:09:33
ソルス(ENo.441)
「やめ…やめて……くれ!一体……何のつもりだ!」

震え、身を強張らせながら友人の体に居座る何かに問いかける。
否、それが何なのか、誰なのか、知らないはずもない…

「何って、忘れたのかい?何い度もしたじゃあないか?
君がもし、忘れたのだとすれば…思い出させてあげよう」

弧を描く瞳の中に浮かぶ、その欲望。
嗤う、嘲笑っている。
彼にとっては、やる事は、1つだ。しかも、ソルスのたった1人の、大切な友人の体で、だ。
わけも分からぬままにそれは始まり、ソルスは絶望に染まる。

深い夜の、厚い雲の中に月は隠れて──
2/28 03:00:54
ソルス(ENo.441)
嗤っている、大層嬉しそうに、嘲笑う様に──

違う、彼じゃない。
彼はこんな顔はしなかったとソルスは確信めいたものを得て震える声でその何かに…

「名前、まだ、彼に…約束したから…だから……頼む、彼を…彼を返して……」

涙が目に溜まる。
まだ約束が果たせてない、昨日の約束も、もっと遠出をしようと言う約束も、まだ、まだ、足りない。
彼との思い出作りはまだまだ……

しかし、無情。

「返すもなにも、最初から」





彼の体を借りた何かはそう言うと無抵抗のソルスをそのまま押し倒す。
2/28 02:53:07
ソルス(ENo.441)
唖然としながら聞き届けた。
断末魔の後、彼はソルスにしがみついたまま顔を伏せている。
シン、と静かになった室内はむしろ不気味で……

「な、なぁ……大、丈夫か……?」

これでおさまったのかと、淡い期待と共に不安を半分乗せて声をかけ──


ガバリ、顔が上がったと思ったら彼の表情では見た事もない様な不気味な笑み。
ニタ、ニタ、瞳は弧を描いているではないか。
やけにそのが目立ってる気がして──

思わず、問いかける

「だ、誰……だ?」
2/28 02:44:24
ソルス(ENo.441)
「頼む、気を強く、お前は俺のたった1人の友達なんだから、居なくならないで、俺をひとりにしないで……」

ソルスもまた縋る様にそう語りかけるが、目を見開いて苦悶の叫びをあげ続ける彼を癒す言葉にはなり得ない。
辛いのは彼の方のはずなのに、しかしソルスは彼を抱き締める事しか出来ない。
ソルスの頭痛が彼と居た時に緩和された様に彼の今の苦しみがこれで、少しでも…なんて夢の様な事を考える。

「俺は、ここにいるよ……」

何度もそう言うが、助けを求める叫びは止まない。
どうして、つい昨日までは元気だったのに、普通に話して、綺麗な花畑を見つけたから見にいこうか、なんて話をしていたのに、淡くも穏やかな日々がこんな訳の分からない状況に壊される。

叫びの中、やけに鮮明に聞こえた言葉が……

「ぼくは誰………?だれ、ぼく──」






そして、恐ろしいまでの断末魔が響き渡った。
2/28 02:39:18
ソルス(ENo.441)
彼が頭を抱えて蹲って呻き声を上げているではないか。

何があったのかと、医者を呼んだ方が良いかと思ったがまず本人に声をかけてみないとと、近寄り大丈夫かと肩を掴んで声をかけた。

彼の手が頭からソルスの腕へと伸ばされ、しがみつく様に、縋るように、ソルスの腕を掴む。
「助けて」「ぼくが、消える」「喰われて」「怖い」
必死にソルスにそう告げる、苦悶の呻き、これではまるで死ぬ直前の様ではないか。

涙すら流しながらその瞬間にも苦しげな声を漏らし、体は震えている。
ソルスには何が起きているのかサッパリ分からなかった。だが、彼を失ってしまう、このままでは、と。

だが、何が出来るだろうか。
気を強く持つんだ、などとそんな事しか言えない自分に歯噛み、これは病気や怪我なんてものではない、何かが彼の意識に干渉している。
沢山の記憶の中からふと、そうなのではという推測が導き出される。
が、導き出せたとてなんになる。
 
2/28 02:30:38
ソルス(ENo.441)
ある深い夜の日だった。
会いに行くと約束した日なのに、町の中で起きた事件の処理に手間取り、会いに行くのが遅くなってしまった。

もう眠っているだろうか、迷惑にならなければ良いがとノック、しかし返事がない。
やはり眠ったのだろうかと思ったが、鍵はかけられていない、何かがおかしい。
そう感じて扉を開いた……
2/28 02:15:47
ソルス(ENo.441)
約束が、果たされる事はなかった。
2/28 02:11:08
ソルス(ENo.441)
ある日、すっかり友人として馴染んだ時にソルスは1つの提案をした。

「アンタの名前を俺が考える、なんならアンタの望む名を探しに行っても良い、アンタの名前をつけよう」

その提案に名もなき彼は頷いた。
その時、多分嬉しそうだったのだろう、名は命、その個体を維持する為の大切な物。それもあるが、ソルスがそうしてくれる事自体が嬉しかったのだろうか──

ソルスも最初は押し付けがましかっただろうかと悩んだが、相手が喜んだと分かれば安堵した。

名の候補は、あった。何故その名前にしようと思ったのかは漠然としていたが、おそらくそれが彼に合う名前だろうと。
だが、もっとしっかり考えて決めようと、頭を悩ませていた。
2/28 02:10:41
ソルス(ENo.441)
彼といる時だけはソルスの慢性的な頭痛も少しは落ち着きを見せていた。

というのも、ソルスは生まれつき自分ではない自分と同じ人間の、自分ではない記憶を数え切れない程その身1つで内包していたからだ。
そのせいか、頭が常に割れる様な痛みが伴い、時には意識を失う事すらあった。

彼の前でも倒れた事があったが、それでも1人でいる時より何倍も楽で、心強かった。

お互い英雄である事と、歩く魔道図書館である事だけを要求されてきた身だからか、互いの前では気をぬく事が出来て良かったのだろう。
彼が、自分の置かれてる状況を辛い、苦痛だ、と感じられたかどうかもソルスと出会うまではどうだったのかは不明なのだが──
2/28 02:01:49
ソルス(ENo.441)
ソルスが彼と出会ったのは偶然…今となっては必然なのか偶然だったのかは分からないが…

彼が隠居同然の様な暮らしをしていたのも、彼の知識を上が保管していたという事だろう。
だからソルスが会いに来る時も、連れ出す時もコッソリとだった。でなければ、救国の英雄としての功績があるソルスとはいえ、何かしら厄介な事になりかねないからだ。

最初こそずっとキョトンとした顔をしていた彼の元へ何度も訪れ、外の話から自分の仕事の話など些細な事を沢山話したり、連れ出して町で売り出している串焼きを2人で食べたり、それを繰り返す毎に彼もまたほんのりとでも嬉しそうにしたり……
ソルスが帰る時には名残惜しそうにしていた事もあった。
2/28 01:55:15
ソルス(ENo.441)
その友人には自分と同じで名前がなかった。
大衆が彼に求めるのはその凄まじいまでの魔術に関する知識。
大衆それ以上は求めず、それ以外を求めなかった。そう、彼の知識を欲していた。
しかし、その友人はその知識以外はなかったのだ、それだけ、本当にそれだけだった。

人ではなく、彼を古代の図書館だか何だかと勘違いしていたのだろうか……
2/28 01:40:47
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