ウルタール芸能事務所応接室

導入は別の場所かも

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> 加田住 レン(1335)
不動 綾人(ENo.1336)
不動綾人はいつも冷静沈着であった。

用意周到ゆえではない。
もちろん必要な準備は怠らないが、過ぎたことをしているわけではない。
彼は不測の事態が起こったとしても持ち前の洞察力と思考の速さからいつでも臨機応変に立ち回ることができるからだ。

だから今回訪れるのは、未知の──いや、地球に住まう人間の尺度では到底測れぬ世界に関わる者たちの棲家であると察しがついた上で、待ち合わせを外に変更したり防御の備えをしたり彼らについて詳しく調査したりもせずにただ客として足を踏み入れたのだ。

人が何を神とするかは曖昧で、実際のところそれは伝承に過ぎなかったり、妖怪物の怪の類であったり、神話として語り継がれているものが事実であることは少ない。
だが、人の想像や怖れが現実のものとなる場合や、神からの干渉を受けその存在を感じ取った者が記した場合もあり、あながち夢物語とも言い難い。

綾人はレンの中に体が樹になっている女を見た瞬間ある神話で旧支配者と呼ばれるものを連想する程度にはその手の知識があり、彼女の所属する芸能事務所の名前や桔梗院関係者の噂から、言い伝えられる通りそれらの存在は実在し、測り知れぬ脅威となり得るものなのだと知った。

しかし、だからどうということはなかった。

綾人は人間としてこの世界の安寧を保つことを己の使命と心得ていた。
人間・怪異の区別なく、この世に生きとし生けるものたちが生命の営みを続けられるよう。
生命活動に関連しない異種族間の殺生、こと人間を脅かす怪異の抑制。人間の自分が介入すべきはこれのみ。

この宇宙において人間がいかに無価値であろうとも、いつ人智の及ばぬ存在に握りつぶされてもおかしくなかろうとも、今この瞬間懸命に生きる命の火を絶やさぬよう。それが綾人の願いだった。

よって、不動綾人は冷静沈着であった。

事務所の扉を開いた瞬間、自分は異界に足を踏み入れたのだと気づいた。

強大な怪異は世界の裏側、現実とは異なる位相に異界を発現させることができる。
異界は異界を発生させている怪異を祓い、儀式を行うことによって消滅させることができる。
綾人は日頃から桔梗院の依頼により人間を異界に引きずり込む怪異の討伐を行っている。
よって異界への侵入および探索、そして核の討伐・破壊──これらは日常茶飯事であった。

だからこそ、わかるのだ。
この異界を作ったのが、自分が戦ってきた怪異とは比べ物にならない、理解の及ばぬ存在であるということが。

それでも不動綾人は、ただそこにいた。
恐れるでもなく、立ち向かおうとするでもない。

八百万尾大和の見立て通り、不動綾人は己の立ち位置を弁え、何を理解しても決して揺るがない。
その身に纏う力が不動綾人という存在を別格たらしめていることは言うまでもないが、その精神もまた信念に裏付けされた確固たる個というものを持っているのだ。

5/10 23:18:45
加田住(ENo.1335)
「なんかしっくりくるね…うん、青が似合ってるよ」

全身を覗き込むように頭を揺らしニコニコと綾人のイメチェンを楽しんでいるレン。
その振る舞いは以前より明るくなったと見えるだろう。
だが、貴方の目に映る変化はそれだけではない。

レン自体に変化はないように見えるが彼女の魂を取り巻くナニカは確実に変化していた。
大樹の女神は消え失せ、だがレンそのものにその質を感じる。
その上で彼女の肉体を作る何かは既にこの宇宙のものではなくなっていた。
──それらはあやふやな概念だ。いろんな気配を内包し名状しがたき色を持つ。
なればこそ理解は避けるほうが好ましく、だが彼女を認識してやる為にあえてその形を定義するのであれば。

頭はかろうじて人間、首から下が怪異である。

以前はその肉体のすべては夢の泡沫から生まれたような存在だったのだがいまやその面影を残すのは頭部のみ。
そしてその肉体に漂う怪異性は、この事務所の内部のモノと酷似している。

鋭い者なら入ってすぐの喫茶店…つまり玄関のすぐ近くに異界の穴が開き封じられている事には気が付くのだろう。
だがその違和感を囮として精巧に隠されたこの事務所こそが異界であると綾人ならば理解できる。
ここを創ったであろう大いなる存在はもう消え失せているように感じる、では何がこの場を維持しているのか?

「来てくれてありがとう、必要な事は後で話すね」

トーンを下げた声でレンはそう口にした。
レンは綾人に自分がどう見えているか、何を考えているかを察したわけでもない。
ただそう口にしたのはタイミングだったのだろう。
5/10 21:03:37
「そう、恐ろしいまでに不動綾人は不動綾人と言うより他ない」

くつくつと喉の奥で嗤う。
これでは思案も危惧も配慮も意味をなさない。
己が滑稽に思えるほど無意味な心配を大和は笑った。

ウルタール芸能事務所が欲しがる人間は二種類。
もちろん芸能に携わりたい人物であることは前提だが、こっちは退魔師としての話だ。

先ずは、興味以外に鈍い者。
どんなに強さを持とうが外なる世界に鈍いものは存在する。
こういうものは好ましい。ウルタール芸能事務所の内部にあってその本質を視る事はない。
彼らは彼らとしての強さを持ち、簡単に深淵の影響を受けたりはしない。

そして、狂気を凌駕する個を持つ者。
深淵の内に己の立ち位置を見出し、維持できる者。
こういうものは望ましい。彼らは異界においてその呼び声に応える事はない。
興味を持ち応じたとしても自らを変質させることはないだろう。

「お前もその筈だったんだがな」

自分の右腕だった男を思い出す。
その男は確かに狂気に耐えうる性質をしていたが情に負けて、ただレンの為にその身を深淵に寄せてしまった。
だからこそ、この城から退出させるしかなかった。

「俺らが俺らとして成り立っていく条件のようなモンだ。
ウルタールに居てこっちの神話に存在を寄せるようなヤツは置いとけねぇ」

そうでなければ、ウルタール芸能事務所は退魔師たちに滅せられるだろう。
この事務所が外なる世界を拡げる為にある門であるのか、外なる世界を封じ込めるための門なのか。
桔梗院をはじめとする各組織はそこを見張っている。
ならばこの場を続けていく為の絶対条件は後者であることだった

「つまり面接は合格だ、不動 綾人……あとはお前さん次第、だな」
5/8 19:17:21
綾人が事務所に足を踏み入れたその瞬間、その存在を意識するものがここにも一人。
気を張っていたわけでも観測しようとしていたわけでもない、それでも理解するしかない。
なぜならこの場所はこの男の城なのだから。

「は……これが不動綾人か」

全身が総毛立つ感覚。
この場において王の存在を脅かすほどの存在感。
思わず大和は笑っていた。

「……話が違うじゃねぇかよ桔梗院、聞いてねぇぞこんな」

取り寄せた不動綾人の情報ファイルを持ち上げ、机の上に投げた。

「こんな……化け物とは、言い難いねぇ?
さてこれはなんて評する?神か?支配者か?どれでもない」

大げさな独り言をいい、ジェスチャーをする彼の口調は楽しそうだ。

ここはウルタールだ。
異界にあって深淵だ。
その王城に踏み込んでなお精神を揺るがす事はなくその者はその者の足場を深淵よりはるか高くに置いている。
そんな完全な異物の筈の存在が周囲を揺るがすこともせずに来客として訪れているのだ。
これが笑わずにいられようか。


 
5/8 18:57:14
イメチェンだ!

レンは予め言われていた言葉でその感覚を飲み込んだ。

「わぁぁ……以前より綺麗になったね!綾兄ィ!

綾人はより美しくなった。そう感じた。それだけ。
本当はそれだけではないはずなのだが、それでもそれだけの事にした。
野生動物が強いものを見たときにその強さ何かと定義しないように、レンも綾人を綾人と認識出来ればそれでよかった。

「イメチェンしたって言ってたけど……うん、その方が似合ってるよ」

揺れる闇に秘められた蒼炎のような髪を目を細めて見つめ、微笑む。
より彼らしくなったと、そう思うのだ。

5/8 18:42:21
──加田住 レンはそれを言い表す言葉を知らなかった。
理解はできないがわかる
目の前にいる者は今まで知っていた者ではない、それでも間違いなく不動綾人だ。

目に映る違和感を、認識が判断できないそれをレンはしばらく口をあけて視ていたが……



 
5/8 18:16:08
玄関のドアの窓に人影が写るとレンはまるで猫がそうするように背筋をぴんと立ててそちらを見つめた。
そしてそれが待ち望んでいた友人だと気が付くと跳ねるように椅子から立ち上がりその人物を迎え入れる。

「綾兄ィ!ひさしぶ……り……」

弾む声は尻すぼみに消えてゆく。
瞬きも忘れるようにしてその姿を見る。
5/8 18:01:52
> 加田住 レン(1335)
不動 綾人(ENo.1336)
「レン!」

事務所内に入ってレンの姿を認めると、目を細めて笑いかけるだろう。

綾人もレンに負けず劣らず、会えるのを楽しみにしていた。
彼女の身を案じ、無事な姿を見たいという気持ちが強いが。

果たして、彼らには互いがどのように見えるのだろうか。
5/8 05:37:06
> 加田住 レン(1335)
不動 綾人(ENo.1336)
【情報開示】

不動綾人は定義できない強力なエネルギーに包まれている。

その力は、神のごとく強大で圧倒的な格の違いがありながらも、神聖も邪悪も感じない。
何なのか判別がつかず、得体が知れない。
ただただ、異質であることだけがわかる。

その正体不明の力をここでは「謡(ウタイ)」と呼ぶ。

綾人は謡に認識阻害術を混ぜ込み身に纏っている。
これにより、他者からは綾人もしくはその者がイメージする通りに存在を感じられる。
この術は五感を騙すことができ、謡の特殊性も関わることから一般的な認識阻害術を看破できる者であったとしても、術の存在を認識することすら容易ではない。

しかし、神や異界の存在を強く感じる者であれば、認識阻害を突破して謡本来の異質さ、得体の知れなさ、格の違いを感じ取れるかもしれない。

なお、不動綾人はこの事実をできれば隠したいと思ってはいるが、謡の発生源の強大さを一番よく理解しているためある程度漏れ出すのは仕方のないことだと考えている。

「不動綾人はその肉体を得体の知れない強大なエネルギーに覆われており、それを認識阻害術で隠している」

ここまでは見破られても問題ない。

不動綾人の■■■■■■■■■■■■■■■■■■■だけは、知られてはならない。

5/8 05:36:06
> 加田住 レン(1335)
不動 綾人(ENo.1336)
──約束の当日、ウルタール芸能事務所前

綾人は約束の時間より少しだけ早めに玄関前に到着した。
外での待ち合わせなら1時間ほど前から待機しておくのが常だが、今回はレンがお茶とお菓子を用意して待っているとのことであるから、家を訪問するのと同じ感覚でいれば良いだろう。

綾人の当日の服装は、いつもと変わらぬ黒ずくめ。
黒いシャツの胸元を豪快に開け、黒いネクタイを結ばず首からぶら下げている。
黒いスキニーパンツはすらりと長い脚によく似合い、靴や時計などの小物は質を追求した最高級品を身につけていた。
そこまでは、以前よりレンが知り、またBLACK FOGのAYATOといえばと連想される姿そのものであった。

しかし、本人曰く「大幅にイメチェンした」と言っていたのはその髪だ。

腰まである艷やかな黒髪。
それだけで目を引くというのに、さらに印象的なのがその内側の鮮やかな青。

かつてBLACK FOGではAYATOのイメージカラーは黄色とされていたが、退魔師である不動綾人の力を見たことがあるのであれば、青い炎を操る彼には青の方が似合いであると感じられるだろう。

奇抜な髪色ではあるが、イギリス人のハーフゆえのやや日本人離れした彫りの深い端正な顔立ちは髪の強い印象に決して負けておらず、むしろ彼のスター性を強調させる良い材料になっている。

──それだけなら、良いのだが。

5/8 05:30:52
「早く会いたいなぁ…」

玄関が正面から見える位置の椅子に陣取って足をぷらぷらさせて訪れを待つ。
わくわくと心を躍らせ誰かに会いたいと思える、今はもう彼女に心を奪う呪いはない。
ただただ訪れが待ち遠しかった。
 
5/6 08:31:25
(しかし、特別応接室か…)

特別応接室の防御は中で何事も起こさない為の結界などではない。
もはやこの場が異界であることを利用して空間を断絶する、そういう場所である。
異界は内側にいる者たちの意思で構築され、招かれざる者の干渉を一切遮断する。
内側にいるものの能力を制限する力が備わっていないのは訪れた桔梗院などの外部の者たちへの配慮なのだとうたいながら、その実干渉されてはならぬ問題事を密談し、内々に留めて置く為の場所だ。

事務所の内情を、ただ内に籠もりたいのではないかと見る綾人の見解は当たっている。
力をつけすぎて桔梗院の監視が強まればやりづらくなるが、BLACK FOGの不動綾人は欲しいのだ。
なので本人の意思次第、事務所としては流れに任せようという意図で強く勧誘をしない形を選びはしたが、大和としては外部の者である退魔師にレンが余計な事を言うのは避けたかった……相手が信頼できても外側から向けられた監視の目は違う。

(……この機会に僕の事を全部話せってのか?大和。
それとも僕の知らない何かが綾兄ィの方にあってそういう事を探れって?わかんないな)

だが、そういった事に疎いレンは察しもつかず首を傾げる。

(綾兄ィが凄い事だけはわかるんだけどなぁ……本気でスカウトしろってことか?)

預けられた銀色の鍵を投げては掴み投げては掴み……悩んでも分からないので考えるのをやめた。
5/6 08:27:55
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