ウルタール芸能事務所応接室

導入は別の場所かも

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「しっかしまぁ……話してはあるけどこれだけ猫がいると驚いちゃうだろうね」

カウンターでほかの作業をしている金髪の青年に話しかけると彼はやれやれといった風に肩をすくめた。
青年が猫たちに何やら話しかけると猫たちはバックヤードへと滑り込むように雪崩れ込んでゆく。

「あっははは、ありがと!さすがキミ達は話がわかるね
あとからメザシの詰め合わせを献上するよ」

ウルタール芸能事務所には猫が多い。
普通の猫も、怪異の猫も我が物顔で闊歩しており彼らはこの事務所で一番偉い。
──それはこの場所が『ウルタールの一部』だからに他ならない。

正しくはこの喫茶店の隅に幻夢郷と呼ばれる異界の町に繋がっている穴が開いておりその穴の先がウルタールという異界なのだが。
猫達は、いや怪異である猫達の殆どはその穴を門として異界と此方を好きに行き来しているようだ。
ウルタールという異界の町には『何人も猫を殺してはならない』という掟がある。
意味は分からずともそういうルールなのだ、この場にもそれが適用されている。だからここはウルタールなのだ。

「うちの事務所じゃ猫が偉い……それも説明しないとだなぁ」

異界の門は結界のスペシャリストである枇亘 透矢の手によってここに堅く封じられている。
心配はない、今はもうこの穴に危険性は殆ど存在しない。
この事務所の内側から出さない限り、問題は何もない。

「……でも綾兄ィを見たらキミ達もはしゃいじゃうだろうから、今日は大人しくしててね」

猫達を奥に追い立ててバックヤードの扉を閉める。
残った普通の猫たちがうろうろしているが、それはまぁ良いだろう。
あとは客人の訪れを待つばかりだ。
5/6 07:53:54
綾人と会う予定を入れた当日。
レンは約束の時間よりも随分前から一階にある事務所の玄関を兼ねた喫茶店で待機していた。

「苺タルトも用意したし、コーヒー紅茶もすぐ淹れられる…完璧完璧」

カウンターの内側で足に絡みつく猫たちをうまく避けながらもてなしの準備をする。
……苺タルトはただ自分が食べたいだけの物なのだが。
5/6 07:25:41
> 加田住 レン(1335)
不動 綾人(ENo.1336)
所長は同席しないとのこと、こちらがどの程度乗り気かも測りかねているのだろう。
しかし、それにしても慎重だなと綾人は感じた。

自分で言うのもなんだがBLACK FOGはインディーズとはいえ勢いのあるバンドであったし、その中でも一番人気のボーカリストが独立したとなると、これを逃す手はないと様々な事務所から声が掛かったものだ。

退魔師としての不動綾人はさらに有名──家柄だけではなく、古い世代の退魔師からは英雄と称されたほどの実績のある実力者である。

桔梗院傘下の芸能事務所となれば、綾人と繋がりを持っておこうとするのが自然であるだろう……普通に考えれば。

ウルタール芸能事務所。
かつては大和芸能事務所だったか。
元々は他の桔梗院所属組織と同じように、表の顔を持つ退魔師ギルドでしかなかったはずだ。

だが、ある大きな事件を起こしたことにより現在は桔梗院の監視が入っているいわくつきの事務所だと関係者内で囁かれている。
十数年前に起こった虫の怪異になにかしら関係があるとされる久凪の者まで抱き込んでいるのだから、きな臭いことこの上ない。

テリトリーの守護者は足りているから、よそ者を積極的に入れる気はないといったところか。
桔梗院の任務を数度共にした枇亘 透矢を思い浮かべた。彼もウルタール所属だ。彼の結界術は有事に役に立つだろう。

ウルタール芸能事務所が桔梗院に問題視されるものを抱えているとして、それを行使し世界になんらかの影響を及ぼしたいのであれば綾人のような強者は敵視するか逆に味方に引き入れておこうとするだろう。

しかし今回、積極的に誘うでもなければ拒むでもない対応を見るに、ただ内に籠もりたいのではないかと見た。
外からの侵入を警戒はすれど退魔師とわかっている客を入れる程度には防御に備えがある。そんなところか。

であれば自分に求められるのは退魔師としての力ではなく、単純に売れるか否か。
そこも含めてやはりウルタールに所属するかは五分五分だなと思った。

まずは、レンと実際に会ってみることだ。
天秤はそこで大きく傾くだろうから。
5/5 14:54:38
> 加田住 レン(1335)
不動 綾人(ENo.1336)
スタンドに立てかけたスマートフォンから陽気な着信音が流れると、PCでスケジュールを確認していた手を止めてアプリを開いた。

『レディのたしなみ持ってるな。偉いぞ』

レンの返信を読んでつい小さく笑ってしまい、第一声として自然とこの言葉を打ち込んでいた。
自分にとってレンは妹のようなものだが、それでも若い女性が男を部屋に招き入れるのは良くない。
もし無邪気に部屋においでよなんて言われたらやはり説教していたところだっただろう。

さて、レンは早速事務所の所長に話まで通してくれたらしい。
その行動の速さと元気な様子の返信に、自分と会うのを楽しみにしてくれている姿が目に浮かんで微笑ましい気持ちになった。

続いて空いている日をいくつか挙げる。直近なら本当にすぐ、数日後だ。
予め確認しておいたのでスムーズに事が運ぶだろう。

レンと所長に向けて礼を言い、楽しみにしている旨伝えるとスマートフォンを再びスタンドに戻した。
応接室まで借りるのだから、こちらも事務所入りを前向きに考え準備をしておかなければ。
5/5 14:52:27
「これでやっと綾兄ィに連絡できるね、よかったよかった」

所長室を出て……ついでにそこに合ったお菓子をふんだくって出たところの廊下で早速連絡を入れる。

『おまたせ!事務所の応接室使っていいって所長に許可もらった!
僕の部屋は嫌がりそうだからそこで会おうよ。
所長は今回は同席しないらしいから気軽に遊びに来てくださいって。どう?』

『綾兄ィの都合のいい日を聞かせてくれたらお茶とお菓子用意して待ってる』

綾人はコーヒー派だったろうか、紅茶派だろうか。それとも日本茶?
そんなことを考えながら約束を取り付けるべく返信する。
いつ、会えるだろうか。楽しみだ。
5/5 00:38:13
「成程、そういうことなら好きにしろ。
俺としてもお前が適当に出歩くよりずっといい……ほら、特別応接室の鍵だ、持ってけ」

話を聞き、レンに任せるといった感じで引き出しから鍵を取って渡す。
特別応接室は普段は使わない、霊的防御の備わった部屋だ。
大和は専ら桔梗院関係の人間との密談に使うことが多いその部屋を使えとレンに指示を出した。

「信頼できる相手だってテメェの言葉を信じてやるが、相手も退魔師なら……一応な。
スカウトに関しては無理強いするな、気が乗るようならこれも渡しておくから渡しとけ
相手がその気なら詳しい話はあとで俺がする……お前は普通に遊んで来い」

そうして桔梗院とウルタール芸能事務所の複合マークが浮かぶ名刺を差し出し、レンに持たせる。
これで事務所の許可は下りた。
5/5 00:29:27
加田住(ENo.1335)
「──…ってなわけで、会いに来てくれるんだよね。
 ついでにうちに誘ってもいいか聞こうと思ってさ!」

猫のように机の上で書類の紙をぺちぺちしながら説明を続けた。

「事務所の部屋、かりてもいいよね?」
5/5 00:20:45
「不動綾人?……そりゃぁBLACK FOGの不動綾人か?」

名前を聞けば手が止まる。
BLACK FOGの不動綾人。インディーズで名をはせた彼らの知名度は有名……というほど有名ではないのだろうが決して無名ではない。
そして、芸能に携わる者なら知っていてもおかしくない名だった。
勿論、裏の世界としても有名人といえばそうなのだろう、だが芸能事務所の所長としてはどうしても彼のそちらの才能に目が留まる──そういう目で見れば才能の塊、所謂金の卵なのだ。

「こういう職についててあの声とあの顔を知らん奴は才能がないと言って差し支えねぇだろうな。
んで、不動綾人に粉かけてる事務所なんていっくらでもあると思うが、テメェの人脈ってそれほどのモンだったか?レン」

レンに向き合い、経緯を説明しろといった目を向けた。

 
5/5 00:15:34
「あのね、あのね。い~い話持ってきたんだ?」

嫌そうな顔をする大和の机に腰を掛け、目の前の書類に邪魔するようにレンは手をついた。
その手をどかそうとしつつ「オー良かったな」などと話を聞こうとしない所長の顔を覗き込んではにんまり笑い

「推しの歌手が今ソロなんだって~知り合いなんだけど……不動綾人って、ご存じ?」
5/5 00:04:49
「……んだぁ?どうした?」

所長室で元気すぎるレンに突撃を食らったウルタール芸能事務所現所長、八百万尾 大和(ヤオヨロズオ ヤマト)は怪訝な顔をして見せた。
レンに対してこいつが燥いで居る時は碌な事が無い……などと思っているからだ。

5/5 00:01:13
掌で踊らされている……というよりは想定通りなだけなのだろうけれど。
返信を見たレンは自分の誘いにうまく乗ってくれたと小躍りしている。

「やった♪やった♪来てくれるって」

さて、どこで会おう。
自分の家に呼ぶのはきっと嫌がられるだろう。
女性として意識されている訳ではないのは知っているけれど、綾人という人は紳士というか常識人だ……と思う。
事務所と同じビルに住居があるとはいえ安易に僕の家~とかいうときっと兄貴分としての軽い説教を食らう気がする。

「事務所借りるつもりだったけど~……一応、責任者に話すか」

軽い誘いを入れただけではあるが話しておかないといけないことだしなぁと思いながら玄関に向かいパンプスを履く。
目指すは所長室だ。
5/4 23:55:12
> 加田住 レン(1335)
不動 綾人(ENo.1336)
とりあえずここで切る。

正直、事務所については五分五分だなと考えていた。

レンの所属するウルタール芸能事務所は桔梗院のカバー組織であり、退魔業に差し支えがないよう働けるというのは実に都合が良い。

ネット文化が発達した昨今、シンガーソングライターは力があれば個人でも十分やっていける。
むしろ、悪徳業者が多い業界なので事務所に所属しようと思うとデメリットの方が多いのだ。

しかしレンの所属する事務所なのであればそれは軽減される。
後は──

「レンの様子かな、と」

言いながら送信ボタンを押した。

事務所の件は会う口実として出しただけかもしれないし、もしくは本気でスカウトしたいのかもしれない。
もとよりどちらでも良い話、今食いつくのは早計だ。
5/4 21:58:37
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